標本の詳細サイト
哺乳類(綱)・束柱類(目)
Paleoparadoxia tabatai
パレオパラドキシア タバタイ
     



 標本No.2019110403 咬柱配置図
 この標本は、パレオパラドキシア タバタイの下顎左側の第2大臼歯と思われる。
 2019年11月4日に、東松山市葛袋の「東松山市化石と自然の体験館」で、田辺氏によって、
 岩割りで発掘された標本である。
 上段の画像は、パラエオアート館で、最初に制作されたレプリカである。下段の画像は、本
 標本を撮影したものである。
 標本そのものは、研究のため「東松山市化石と自然の体験館」に保管・展示されている。
 標本の大きさは、
 歯冠長=26.3mm、歯冠幅=18.4mm、歯冠高=9.9mm
 歯根が欠如し、歯根との境界が不明瞭で、歯冠高は不正確である。
 全体的に咬耗が進んでいる。歯冠表面全体の形が卵のような楕円形で、歯冠中央が凹み、近
 心端の原錘(protoconid)部分が盛り上がるのは、下顎歯の可能性が高い。上顎歯の場合は、
 近心端が逆にへこむ。よって、下顎左の第2大臼歯の可能性が高いと考える。
撮影面
歯冠表面 歯冠舌側面 歯冠頬(唇)側面 歯冠近心(前)面 歯冠遠心(後)面











詳細
左上の咬柱、左半分が
、原錐(protoconid)
である。右半分が
後錐(metaconid)
である。
左端の咬柱が、後タ
ロニッド(posterior
talonid)、左端から
2番目の咬柱が内錐
(entoconid)である。
左端の咬柱が、原錐
(protoconid)である。
手前中央の低い咬柱
が次錐(hypoconid)
である。
手前右半分が、原錐
(protoconid)。左半分
が、後錐(metaconid)
である。
最手前の咬柱が、後
タロニッド(posterior
talonid)である。中央
右端の咬柱が、内錐
(entoconid)である。

 パレオパラドキシア化石の最初の発見
 パレオパラドキシアの化石の最初の発見は、1923年に佐渡であった。新潟県佐渡市相川町旧中
 山トンネルの工事中に、西側入口付近から数個の臼歯が発見された。発見者の田畑さんの名前
 をとって、Cornwallius tabataiと命名された。内、2個の臼歯は、早稲田大学に保管されてい 
 たが、1945年の東京大空襲で焼失した。内1個が、長く、相川小学校に保管され、現在相川町
 郷土博物館に収蔵されている。


   パレオパラドキシアの全身骨格標本                                                 
標本名
発見年
発見場所
地層名
年代
発見部位
所蔵場所
発掘詳細 標本画像 復元画像
IZUMI specimen
泉標本
1950年
岐阜県土岐市泉町
明世累層中部・山野内層
1700~1600万年前
ほぼ全身骨格
国立科学博物館
岐阜県土岐市泉町隠居山から、
初めて1個体分の全身骨格が発
見され、デスモスチルスの仲間
で原始的なパレオパラドキシア
Paleoparadoxia tabatai
と名付けられた。発見者は岐阜
市立多治見高校の2年生、東
充彦君。幼体の全身骨格標本
だった。
OHNOHARA specimen
大野原標本
1972年
埼玉県秩父市大野原築瀬
秩父町層群・奈倉層
1600万年前
頭骨を含む上半身部
埼玉県立自然の博物館
埼玉県秩父市大野原の荒川右岸
の崖から、1個体分の全身骨格
が発見された。発見者は埼玉県
立秩父農工高校、堀口勉君。
これは、前肢のない、頭骨を含
む上半身部の骨格標本だった。
頭骨が完全な標本。1977年まで
発掘するのに要した。体長2.3m、
体高1m。
KINDAICHI specimen
金田一標本
1980年
岩手県二戸市金田一
末ノ松山層・新田砂岩部層
1550万年前
頭骨・頸椎を除くほぼ全身部
岩手県立博物館
岩手県二戸市金田一の馬淵川の
河床から、1個体分の全身骨格
が発見された。発見者は、川内
次男さん。これは、頭骨・頸椎
を除く、胴体部の骨格標本だっ
た。米、スタンフォード大で発見
された頭部をつけ、復元した。
体長2.9mと日本最大。
HANNYA specimen
般若標本
1981年
埼玉県秩父郡小鹿野町般若
秩父町層群・奈倉層
1600万年前
頭骨を除く下半身部
埼玉県立自然の博物館
埼玉県秩父郡小鹿野町般若の秩
父セメント砕石所(現在の般若
の丘)から、1個体分の全身骨格
が発見された。発見者は秩父セ
メントの坂本道夫さん。これは、
頭骨・前肢を除く下半身部の骨
格標本だった。肋骨や椎骨が規
則正しく配列した状態で発見さ
れた。
TUYAMA specimen
津山標本
1982年
岡山県津山市上田巴
勝田層群・吉野層
1600万年前
脚を欠く、頭骨を含む全身部
津山郷土博物館
岡山県津山市上田巴から、1個
体分の全身骨格が発見された。
発見者は、岡山県津山市の中学
3年生、水杉和弥君。一人で10
日程かけて100個近くの化石を
収集した。これは、頭骨を含む
上半部の骨格標本だった。1977
年まで発掘するのに要した。
体長2m、体高70cm、メス?。
YANAGAWA specimen
梁川標本
1984年
福島県伊達市梁川
梁川層
1650~1500万年前
完全頭骨を含むほぼ全身部
福島県立博物館
福島県伊達市梁川の広瀬川河床
から、肋骨等の骨が発見された。
発見者は、梁川町の町史編纂室
に勤務していた幕田一義さん。
さらに、1984年、ひでりで河床
が現れ、本格的に発掘、前肢を
除く、完全な頭骨を含む全身の
骨格標本だった。tabataiでは
ない新種?。
MIZUMAMI specimen
瑞浪標本
2022年
岐阜県瑞浪市釜戸町
明世累層最上部・宿洞層
1600~1550万年前
前肢を欠く、頭骨を含む全身部
瑞浪市化石博物館
岐阜県瑞浪市釜戸町の土岐川河
床から、地域のボランティア清
掃中に地元の方による発見。前
肢を欠くが、脊椎・肋骨がつな
がったの頭部を含む全身の骨格
である。2022年6月10日、大水
で化石が流される可能性がある
ので、緊急発掘を実施した。全長
は、2m~2.5mで大人の個体。

 パレオパラドキシアとデスモスチルス   
 パレオパラドキシアは、デスモスチルスのように四肢が体の側方に強く張り出し、腹部を擦る 
 ように姿勢を低くしている。おそらく同じような生活をしていたと思われる。
 デスモスチルスと同様な臼歯を持つパレオパラドキシアは、北海道から岡山に至る地域、約40 
 地点から約60標本以上産出している。頭部を含む全身骨格は、アメリカの3体を含めて8体で 
 ある。体長2m前後で、デスモスチルスと共に束柱類を構成している。


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