展示標本のサイト
哺乳綱・長鼻目・プラティベロドン属
manmmalia ・ Proboscidea ・ Platybelodon
     



展示標本の紹介

       
標本データ 歯冠表面 歯冠頬側面 歯冠舌側面 歯冠近心(前)面 歯冠遠心(後)面 歯根底面 備  考
標本No.2001121504
プラティベロドン
     上顎左第2大臼歯

Platybelodon grangeri
中国、甘粛省、廣河県、Linxia Basin
中新世後期・1260万年前
Hujialiang Formation  

長さ:121.8mm、幅:56.1mm、
歯冠高:42.4mm、
歯根底からの高さ:104.5mm、
重さ:480g
第10回国際化石鉱物ショー(池袋)で
石尚礦物化石典蔵館(KIKO'S EN-
TERPRISE CO.,LTD.)から購入。
当時は、たくさん販売されていた。
全体が白みがかった標本である。基
質堆積物が白色の石灰質砂岩のため
と思われる。頬側面と舌側面が平行
で、稜(咬柱)が3列であることから上
顎第2、前端部が左に傾斜した凹み
なので、上顎左第2大臼歯とわかる。
咬耗がかなり進んでいるので、成熟
した大人のものである。
         
標本データ 歯冠表面 歯冠頬側面 歯冠舌側面 歯冠近心(前)面 歯冠遠心(後)面 歯根底面 備  考
標本No.2009042901
プラティベロドン
     下顎左第1大臼歯

Platybelodon danovi
中国 寧夏回族自治区、同心県
中新世後期・1260万年前
Hujialiang Formation  
長さ:61.9mm、幅:36.4mm、
歯冠高:27.0mm、
歯根底からの高さ:65.0mm、
重さ:130g
ヤフーオークションで購入。エナ
メル質は黒く、象牙質が白い標本
である。基質堆積物が白色の石灰
質砂岩のためと思われる。稜(咬
柱)が3列で、稜が遠心側で幅広
く、稜(咬柱)の数から下顎第1、前
端部が凹まず、中心線に対して直
角やや凸なので、下顎左第1大臼
歯と判断した。咬耗が第1稜と第2
稜posttrite半部に見られ、遠心
側の咬柱ほど進んでいないので、ま
だ若い個体のものである。
         
標本データ 歯冠表面 歯冠頬側面 歯冠舌側面 歯冠近心(前)面 歯冠遠心(後)面 歯根底面 備  考
標本No.2009062101
プラティベロドン
     下顎左第1大臼歯

Platybelodon tetralophus
中国 内モンゴル自治区
中新世後期・1260万年前
Tunggur Formation   
長さ:87.9mm、幅:45.0mm、
歯冠高:45.7mm、
歯根底からの高さ:61.5mm、
重さ:175g
ヤフーオークションで購入。エナ
メル質は茶色がかった白で、咬耗
がほぼ、まったく進んでいない。
第1稜posttrite半部(近心側左端
)が壊れている。その他ひび割れが
多く見られる。第1稜より第3稜の
ほうが幅広く、稜が3列で、前端部
が凹まず中心線に対して直角なの
で、下顎左第1大臼歯と判断した。
咬耗がないので、まだ萌出前の歯
で子供の個体のものである。

 プラティベロドンの化石の発見
 1922年、アメリカ自然史博物館のアンドリュースがゴビ砂漠で、発掘調査を開始した。1928年
 に中国側に調査地を移し、中新世の哺乳類化石を数多く発見した。1928年に初めて発見された 
 プラティベロドンは、調査の代表的な成果である。中国では、これら哺乳類の化石骨や化石歯を
 竜骨・竜歯と称し、漢方の薬剤に利用してきた。最近まで、かなり大量に発掘されていたと考え
 られる。しかし、21世紀になり国家レベルで化石を保護しようと取り組み始め、採掘が禁止さ
 れている。現在、プラティベロドンなどの化石の流通は、ほとんど無くなっている。

2022年、国立科学博物館で特別展
「化石ハンター展」が行われ、プラテ
ィベロドンの頭骨が展示されていた。
中国、甘粛省、廣河県、臨夏盆地の
哺乳類化石産地。
中国、内モンゴル自治区、Tunggur、トン
グル台地の哺乳類化石産地。赤茶けた堆
積物である。標本No.2009062101の歯
根側に付着する砂礫岩も赤茶色で、他の
2点とは、基質が全く違う。

標本No.2009062101の第1
稜posttrite主咬頭の割れた断
面の表面が灰色のエナメル質、
内部が白い象牙質とわかる。萌
出前なので、エナメル質表面に
白いセメント質の沈着がない。
2022年、国立科学博物館で特別展「化石ハンタ
ー展」でのプラティベロドンの頭骨・上顎部分。
内モンゴル自治区で産出。
2022年、国立科学博物館で特別展「化石ハンタ
ー展」でのプラティベロドンの頭骨・下顎部分。
内モンゴル自治区で産出。

 プラティベロドンの歯とゾウの進化
 上の写真、「標本No.2009062101の第1稜posttrite主咬頭の割れた断面」には、エナメル質に 
 シュレーゲルの条紋も見られる。表面に対し約40度の角度で交差している。草食の哺乳動物の咀
 嚼機能の向上とエナメル質の強度を増すための微細構造である。象牙質にも細かい模様が見られ、
 象牙細管と思われる。長鼻類は、進化が進むにつれて臼歯が特殊化した。歯冠が高くなり、コブ状
 の突起は稜状から板状となり、エナメル質はしだいに薄くなった。最初は、なかった歯冠セメント
 もステゴドンの段階から発達するようになった。また、臼歯の大きさ自体も徐々に大型化している。
 このような変化は、生息する地域の環境の変化とそれに対応した生活様式の変化を反映していると
 考えられる。ステゴドンのグループは、中新世中期の比較的原始的な種類であるが、エナメル質の
 二層化が見られる。
 Stegodon aurorae(アケボノゾウ)は、鮮新世末期から更新世前期に日本にいた小型のゾウで、
 日本の固有種と考えられる。臼歯は数枚の稜からなり、歯冠も高く進化した長鼻類の特徴を持つ。
 エナメル質は完全に2層となり、外層と内層に別れる。外層と内層とではエナメル小柱の配列が異
 なるため、咬耗に対する強度が異なり、外層に比べて内層が低くなっている。これにより、エナメ
 ル質の咬合面が複雑化し、食物の咀嚼機能に役立っている。
 Palaeoloxodon naumanni(ナウマンゾウ)は、更新世後期の長鼻類で臼歯は極めて大型化し、
 エナメル質は薄く、咬板が発達している。エナメル質は完全に多層化し、草食に適したものとな
 っている。

 プラティベロドンの歯の部分名称
 プラティベロドンの上顎左側の第2大臼歯
中国科学院の王石奇(Wang Shiqi)らの「January 2013 Acta Palaeontologica Polonica
58(2):221–240」の「中国甘粛省臨夏盆地の中期中新世産のゴンフォテリ科哺乳類プラティ
ベロドン」の「Fig.2 Gomphotheriid dental nomenclature (left M2 of Protanancus
chiji−ensis), from Tassy (1983: fig. 4, slightly revised)」を改編。
独自の翻訳で、部分名称を決めた。上の図は、
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