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哺乳綱・海牛目・マナティー科
manmmalia・Sirenia・Trichechidae
     



マナティーの歯

         
標本データ 咬合面 歯根底面 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 備  考
標本No.2016112002
マナティーの上顎右歯
Trichechus manatus

Santa Fe River、
columbia co.、Florida

更新世・12.5~1万年前
Alachua Formation

長さ:14.3mm、
幅:16.2mm、
厚さ:9.5mm、
重さ:2.74g
ヤフオクで、R.Hさんより購入。
咬合面の摩滅は、かなり進んでい
る。象牙質の部分が深くえぐれて
いる。歯根底は、3本の歯根が元
から折れ、ないが、舌側の1本の
大きい歯根の部分だけ盛り上がる。
歯冠は、遠心側面が欠けている。
象牙質は茶色で、かなり珪化して
いる。歯頸部が明瞭である。舌側
面の歯冠は、1本の咬柱に見える
が、頬側面の歯冠は、2本の咬柱
があり、間がくびれている。
         
標本データ 咬合面 歯根底面 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 備  考
標本No.2018061001
マナティーの上顎左歯
Trichechus manatus

Santa Fe River、
columbia co.、Florida

更新世・12.5~1万年前
Alachua Formation

長さ:16.3mm、
幅:22.3mm、
厚さ:12.1mm、
重さ:4.71g
ヤフオクで、R.Hさんより購入。
咬合面の摩滅は、やや進んでいる。
象牙質の部分がややえぐれている。
歯根底は、3本の歯根が元から折
れ、舌側の1本の大きい歯根の部
分だけ盛り上がる。歯冠は、完全
である。象牙質は茶色で、かなり
珪化している。エナメル質は淡黄
色である。歯頸部が明瞭である。
舌側面・頬側面からは、2本の咬
柱に見え、頬側のくびれの方が深
い。遠心側の咬柱の方が小さい。
         
標本データ 咬合面 歯根底面 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 備  考
標本No.2020020901
マナティーの上顎左歯
Trichechus manatus

Withlacoochee River
Marion co.、Florida

更新世・12.5~1万年前
Alachua Formation

長さ:19.0mm、
幅:13.4mm、
厚さ:22.9mm、
重さ:4.42g
ヤフオクで、R.Hさんより購入。
咬合面の摩滅は、遠心側ほど進ん
でいる。象牙質の部分が深くえぐ
れている。歯根底は、3本の歯根
が残っているが、頬側の2本は途
中から折れている。舌側の1本は、
先が少し欠けている。歯冠は、遠
心側のエナメル質が欠けている。
エナメル質・象牙質は黒色で、内
部は白いようだ。堆積物のタンニ
ンに長く浸かっていると黒くなる
ようだ。歯頸部が明瞭である。
         
標本データ 咬合面 歯根底面 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 備  考
標本No.2020020902
マナティーの上顎右歯
Trichechus manatus

Withlacoochee River
Marion co.、Florida

更新世・12.5~1万年前
Alachua Formation

長さ:18.9mm、
幅:15.1mm、
厚さ:13.7mm、
重さ:3.34g
ヤフオクで、R.Hさんより購入。
咬合面の摩滅は、遠心側ほど進ん
でいる。象牙質の部分が深くえぐ
れている。歯根底は、歯根の外側
の根元だけが殻の様に残り、内部
はえぐれている。歯冠は、ほぼ完
全である。エナメル質・象牙質は
黒色である。歯頸部が明瞭である。
咬合面のエナメル質が頬側に三角
の形にとがっている。頬側は、2
つの咬柱の間が深く切れ込んでい
る。舌側は丸い。
         
標本データ 咬合面 歯根底面 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 備  考
標本No.2020020903
マナティーの上顎右歯
Trichechus manatus

Withlacoochee River
Marion co.、Florida

更新世・12.5~1万年前
Alachua Formation

長さ:13.9mm、
幅:12.5mm、
厚さ:10.2mm、
重さ:1.70g
ヤフオクで、R.Hさんより購入。
咬合面の摩滅が不均等で、舌側半
分がより摩滅している。頬側は、
丸く盛り上がる。歯根底は、3本
の歯根が盛り上がる。歯冠は、黒
色がかり、完全で小さい。歯根側
の象牙質は白色である。歯頸部が
明瞭である。舌側面と頬側面の歯
冠は、2本の咬柱に見え、間がく
びれている。頬側は、2つの咬柱
間が深く切れ込んでいる。遠心側
の咬柱の方が、かなり小さい。
         
標本データ 咬合面 歯根底面 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 備  考
標本No.2020020904
マナティーの下顎右歯
Trichechus manatus

Withlacoochee River
Marion co.、Florida

更新世・12.5~1万年前
Alachua Formation

長さ:15.3mm、
幅:13.9mm、
厚さ:10.8mm、
重さ:2.84g
ヤフオクで、R.Hさんより購入。
咬合面がかなり摩滅している。近
心縁が特に摩滅。歯根底は、歯根
の根元だけがわずかに残り、遠心
側の歯根部が出ている。内部は
えぐれている。歯冠は、ほぼ完全
である。上顎と違い遠心側に突起
(3咬柱目?)がある。エナメル質・
象牙質は黒色である。歯頸部が明
瞭である。舌側面と頬側面の歯冠
は、2本の咬柱が見え、間がくび
れている。
         
標本データ 咬合面 歯根底面 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 備  考
標本No.2020020905
マナティーの下顎右歯
Trichechus manatus

Withlacoochee River
Marion co.、Florida

更新世・12.5~1万年前
Alachua Formation

長さ:16.2mm、
幅:12.4mm、
厚さ:11.8mm、
重さ:3.06g
ヤフオクで、R.Hさんより購入。
咬合面のエナメル質が長楕円形と
なり、摩滅が少ない。2本の咬柱
間がえぐれている。歯根底は、近
心縁と遠心縁の部分だけ歯根の根
元がわずかに残り、突出ている。
内部はえぐれている。歯冠は、ほ
ぼ完全である。上顎と違い遠心側
に突起(3咬柱目?)がある。エナメ
ル質・象牙質は灰褐色である。歯
根底は黒色で、タンニンの影響の
ようだ。歯頸部が明瞭である。

マナティーの骨格と歯
骨格は、がっしりして、クジラとは異なり、海綿質が少なく重い緻密質が多い。緻密質を多くする
ことで重量を増し、沈みやすくしている。肺は、魚のうきぶくろのように、背側一面に配置されて
いるため、自然な姿勢で浮くことができる。歯は、大臼歯のみで、顎の中で歯根や骨を吸収しては、
移動させ、骨を形成することを繰り返し、歯を奥から前に移動させる水平交換である。ケイ酸分の
多い水草を食べ、すり減って小さくなった前の歯から順番に抜け落ち、顎の骨の奥から新しい歯が
生えてくる多換歯性である。一生続く。頚椎が、6個しかない。7個の哺乳類の例外である。肋骨
が幅広い。

マナティーの上下顎歯
現生フロリダマナティー(Trichechus manatus latirostris)の頭蓋骨。下顎骨の咀嚼板(そしゃくばん)が
見える。奥の上下顎歯の噛み合わせがよくわかる。
マナティーは、出生時には、各顎に一対の切歯が存在するが、出生後すぐに脱落する。時には 成人期まで残る
場合もある。その後に3本の乳小臼歯があり、その後は、全て大臼歯である。大臼歯のみのほぼ同形歯で、象の
ように歯が奥から前に移動する水平交換である。顎の骨の奥から新しい歯が生えてくる多換歯性である。数ヶ
月に一回抜け落ち、一生、生え替わり続ける。上顎歯は、下顎歯よりも頬側が広く、外側に傾斜しているが、下
顎歯は、内側に傾斜している。植物を食べるときによく使っているのは、咀嚼板(そしゃくばん)である。これ
は、前歯のあたりに上下についている板状のものである。唇で、はさみ取った水草を咀嚼板で細かくし、奥歯
でさらにすり潰していると考えられる。上下の大臼歯の凸部と凹部が組み合うようになっており、凸部がすり
減っていく。すり減り平らになった歯は、成長とともに前に押し出され、下顎骨が下方へ湾曲しているので、
上下顎歯の距離が離れ、使用されなくなる。ケイ酸分の多い水草を食べるため、咬耗も進み、咬合面が平らに
なった前の歯から順番に抜け落ちる。
フロリダ産の化石マナティーの下顎と歯である。上顎の
大臼歯は、左右に伸びた咬柱の列が2列だが、下顎の大
臼歯は、3列あり、遠心側の3列目は、小さい。上下顎
歯の区別をする大きな特徴である。上顎歯の歯根は、舌
側に1本、頬側に2本ある。これによって、左右がわか
る。下顎の歯根は4本で、遠心側の方が短い。歯根は、
近心側に移動するにつれ、歯根の先端から顎の骨に吸収
されていき、抜けやすくなっていく。


フロリダのマナティーの歯化石産地
フロリダでは、マナティーの化石が河川の底から主に産出する。流域に堆積する、更新世の地層か
ら洗い出されて、河床にたまっていると考えられる。洪水時には、海まで流されることもあり、海
岸や海底からも見つけられている。フロリダ州法により、無許可の採集は禁止されており、年5ド
ルを払い申請すれば、公有地での採集ができ、販売もできる。私有地では、所有者が許可しない
と採集はできない。
特にフロリダ中部のマリオン郡南部を流れる、ウィトラクーチー川(Withlacoochee River)の流
域で多産する。河川の堆積物の中に含まれる多量の植物から出た、タンニンによって河川が赤茶色
になるが、これがマナティーの歯化石に付着して、表面を黒くする。フロリダ北部のコロンビア郡
を流れるサンタフェ川(Santa Fe River)流域からもたくさん産出しており、こちらは、石灰質土
壌に埋もれていたため、エナメル質は、白色から淡黄色で、象牙質が赤茶色になっている。産地に
よって色が異なるので、区別しやすい。
フロリダ北部のコロンビア郡を流れるサンタフェ川(Santa Fe River)、フロリダマナティーが泳
ぐ。石灰岩地帯を流れるため、地下の鍾乳洞から湧き上がる泉が点在し、水温が一定している。
冬は、暖かいので泉の周辺にマナティーが集まる。
サンタフェ川の河床、川岸の粘土層から洗い出
された貝化石や哺乳類の骨化石(黒色)。

フロリダ中部のマリオン郡を流れるウィトラクーチー川(Withlacoochee
River)。
ウィトラクーチー川の河床から、潜水して化石
を見つけ出す。水が濁っているので、照明は必
須である。



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