展示標本のサイト
哺乳類(綱)・食肉目・イヌ型亜目・
クマ下目・鰭脚類

manmmalia・Carnivora・Caniformia・
Arctoidea・Pinnipedia
     



展示標本の種類

画像をクリックすると詳細ページが見られます。
種類
デスマトフォカ科
Desmatophocidae
アザラシ科
Phocidae
アシカ科
Otariidae
セイウチ科
Odobenidae
画像
説明
デスマトフォカ科は、2400万年前~2200万年前
のカナダの地層から発見されたプイジラ(Puijila
darwini、3900万年前とする説もある。)、2400
万年前〜1700万年前のカリフォルニアの地層か
ら発見されたエナリアークトス(Enaliarctos)、
1600万年前~1000万年前の地層から発見され
たアロデスムス(Allodesmus)などの絶滅した
種類を含むグループである。北太平洋で発生し、
分化していったが、中新世後期に大西洋に進出
し、赤道を越え全世界に広がっていった。化石
の形態から、プイジラはイタチ類と鰭脚類の共
通祖先、エナリアークトスは鰭脚類の祖先、ア
ロデスムスはアシカの祖先と考えられる。瑞浪
層群明世層山野内部層の最下部、約1800万年前
の地層から、鰭脚類の国内最古級「エナリアーク
トス」の仲間の頭骨の化石が発見された。日本各
地の中新世の地層からアロデスムスの化石が見
つかっている。
アザラシは、別名「海豹」「トッカリ」と呼ばれる。
アザラシ科は、首は短く、丸みを帯び、四肢には
5本指があり、指の間には水かきが付き、ヒレに
変化している。遊泳時の推進は、おもに後肢と体
全体を使い、爪の付いた小さい前肢は体に付けて
使わない。体には短い毛が隙間なく生えている。
耳介(耳殻)が消失している。アザラシは陸上を
這い、歩けない。陸上・もしくは海氷上で出産
する。一般的に魚やイカなどを食べている。
優れた潜水能力があり、鼻腔を閉じ、吸気を全
て吐き出すことで高い水圧に耐えられる。さら
に蛋白質ミオグロビンにより筋肉に呼吸に必要
な酸素を多く保持でき、潜水に適応した。アザ
ラシ科は、頭蓋骨や四肢骨の特徴からモンクア
ザラシ亜科とゼニガタアザラシ亜科に分けられ
る。モンクアザラシ亜科に属する種は主に北半
球中緯度以南から南半球に、ゼニガタアザラシ
亜科に分類される種は北半球高緯度に生息する。
中新世前期中頃にエナリアークトスから分化し
たグループである。
アシカ科は、オットセイやオタリアやトドを含
む。体はすべて紡錘形で首は長目、四肢はひれ
状で長く、小耳介がある点や前肢を後方へ曲げ、
上体を起こして支えたり、後肢を前方へ曲げる
ことができるなど、歩くことができる。水中生
活への適応度はアザラシ科より低い。泳ぐ速度
は、大きな前肢をおもに使って羽ばたくように
泳ぐので、アザラシより速い。食事をするとき
に海に潜るが、それ以外は陸上で生活する。中
新世前期中頃にエナリアークトス(Enaliarctos)
から分化したグループで、日本各地から歯の単体
化石等が見つかっている。1920年頃、松本市五
常の中新世中期(1500万年前~800万年前)の地
層からシナノトド(Eumetopias sinanonensis)
の頭骨化石が見つかっている。
セイウチ科で現存する系統は、北極海周辺に生息するセ
イウチ(Odobenus rosmarus)のみである。セイウチ科
の分類は、長い牙を具えているかいないかで二分するこ
とができ、長い牙を発達させたグループには「新セイウ
チ類」を意味するネオドベヌス類(Neodobenia)の名が
与えられている。長い牙を発達させる以前の古い形のセ
イウチ類(イマゴタリア属など)ここでは「古代セイウチ
類」と呼ぶ。古代セイウチ類は、中新世前期中頃にエナ
リアークトス(Enaliarctos)から分化したグループで、
約1600万年前、島根県邑南町の地層から産出したネオ
テリウム属の右下顎の化石が日本最古である。福井県の
約1500万年前の地層からも産出している。埼玉県東松
山市に分布する約1500万年前の中部中新統神戸礫岩層
より、イマゴタリア亜科に属する鰭脚類の臼歯化石が発
見された。標本は歯冠高が低く、歯冠の遠位舌側に極め
て発達のよい歯帯を持つことなどから、セイウチ科のイ
マゴタリア亜科に属する鰭脚類の、上顎左第2もしくは
第3前臼歯と判断される。北太平洋沿岸域におけるこの
仲間の記録としては、これまでに知られる限り最も古い
ものの一つとなる。この標本は最古の鰭脚類であるエナ
リアークトス類から、セイウチの系統に分かれた初期の
仲間のひとつであると思われる。


鰭脚類の進化
哺乳類は陸上動物の進化の過程で肉を食べる哺乳類のグループである食肉目Carnivoraの中から、海
へと生活の場を移した哺乳類の1グループが鰭脚類である。鰭脚類という名前は肢がひれ状になって
いることからきている。クジラも前肢がひれ状になっているが、後肢は退化している。それに対し
て、鰭脚類では4本の肢がすべてひれ状で残っている。また、クジラは出産や子育てを含めて一生を
水中で過ごすのに対して、鰭脚類、カワウソ、ラッコなどは少なくとも出産は陸上で行う。クジラの
進化の歴史は5300万年もあるのに対して、鰭脚類の一番古い化石は2250万年前に出現したエナリア
ークトスであって、鰭脚類の水中適応の歴史はクジラの半分程度しかない。最近の研究で、鰭脚類の
旨味に関する味覚遺伝子に、味覚の機能を失わせるような突然変異が起きていることがわかった。
鰭脚類が海での生活において、餌を噛まずに飲み込むことにより、舌で味を感じる必要性がなくなっ
たためと考えられている。アザラシのグループに共通の突然変異とアシカとセイウチのグループに
共通の突然変異が見つかる一方で、全ての鰭脚類に共通の突然変異が見つからない。よって、アザ
ラシはアザラシで海に進出し、アシカ・セイウチはアシカ・セイウチで海に進出したのではないかと
考えられる。北極において陸上生活をする鰭脚類の祖先が少なくとも2種以上存在し、それぞれ大西
洋(アザラシ)と太平洋(アシカ、セイウチ)に進出したのではないかと考えられる。化石の記録か
らもこの考えは、裏付けられる。2007年、カナダの北極圏、ヌナブト準州にあるデボン島で隕石クレ
ーターを調べている際に発見された、プイジラ・ダーウィニ(Puijila darwini)は、2000万~2400万
年前の「歩くアザラシの化石」といわれ、筋肉質のしっかりした四肢と長い尾、さらに足には水かき
があり、泳ぎも歩きも優雅にこなしていた。


パラエオアート館へ

トップページへ