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哺乳綱・海牛目
manmmalia・Sirenia
     



海牛(sea cow)の種類

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種類
マナティー科
Trichechidae
ジュゴン科
Dugonginae
その他
画像
説明
「マナティー」は、海牛(かいぎゅう)目
マナティー科に分類されており、水面に
育つ水草や海藻類を食べる、海生哺乳類
である。低カロリーの水草や海藻類だけ
で大きな身体を維持するため、1日に体
重の約1割もの大量のエサを食べている。
大人では、体長は、3~4m、体重は、200~
600kgになる。分厚い皮下脂肪を持って
いるが、皮下脂肪には防寒性がないため、
水温が15度以下になると死んでしまう。
生息地は、熱帯の沿岸域や河川で、生息
地で種類が異なり、アメリカマナティー、
アマゾンマナティー、アフリカマナティー
など数種類に分類されている。最も大き
いのがアメリカマナティーで、最も小さ
いのがアマゾンマナティーである。寿命
は、アメリカマナティーで60年ほど、アマ
ゾンマナティーとアフリカマナティーが
30年ほどである。マナティーは、15分ほ
ど水中に潜っていられるが、泳いでいる
場合は、3分から4分毎に浮上し、呼吸す
る。前肢は、ヒレ状になり、先端に象の
ものによく似た爪が生えている。後肢は
退化し、尾ビレは、しゃもじ型をしてい
る。尾ビレを上下に扇ぐようにして泳ぐ。
「ジュゴン」は、海牛(かいぎゅう)目
ジュゴン科ジュゴン属に分類されており、
一種のみでジュゴン科を構成する。全長
は、最大で3m、体重は450kgに達する。
骨端閉鎖を起こさないため、長齢個体ほど
体長が長くなる。西太平洋とインド洋の
暖かい砂地の沿岸域に生息し、純淡水域
に入り込むことはない。分布北限は、日
本の沖縄諸島周辺で、南限は、オースト
ラリア沿岸である。鼻先は、下向きの円
盤状をしており、これを使って海底の海
草(海藻は海草が無いとき以外食べない)
を掘り起こして食べている。繊維が多く、
消化しづらいアマモなどの海草を主食と
するため、全長45mにもおよぶ長大な腸
を持っている。摂食量は1日に体重の15
%前後で、摂取した海草類は一週間ほど
をかけてゆっくりと消化吸収される。寿
命は長く、野生下では50年、時に70年を
超えることもある。潜水時間は、1分30
秒前後と海生哺乳類としては短い。象と
同じように切歯(牙)を雌雄ともに持ち、
成熟した雄では外からでも見える。前肢
は、ヒレ状になっていて爪はなく、後肢
は退化していて外からは見えない。尾の
先は、クジラのように湾入した尾びれに
なっている。
海牛目ジュゴン科には、1700年代まで生
存していたステラーカイギュウ属がいた。
寒冷地対応のカイギュウで、ベーリング
海の島の周辺に生息していた。黒く丈夫
な皮膚は、厚さが2.5cmもあり、皮膚の
下の脂肪層は、0~20cm以上あった。こ
れは寒さから身を守るとともに、氷や岩
で体に傷が付くのを防いでいた。体長は、
7mを超え、一説には最大8.5mに達し、体
重は、4~6トンあったと推定されている。
ほとんど潜水できず、丸く隆起した背中
の上部を、海面上に出した状態で漂って
いた。島の周辺の浅い海に、群れを作っ
て暮らしていた。潮に乗って海岸の浅瀬
に集まり、コンブなどの褐藻類を食べた。
歯が退化して、ほとんどなくなっていた。
上顎と下顎の先にある咀嚼板とよく動く
唇で、岩に付いたコンブなどを噛みちぎ
って食べていた。ステラーカイギュウの
祖先は、ドゥシシレン属で、2000万年前
に大西洋から太平洋に進出し、アリューシ
ャン列島に沿って1000万年前に日本にま
で移動した。

海牛目の起源と進化
海牛目は、長鼻目(ゾウ目)と近縁であり、現存する唯一の草食性海洋哺乳類であり、完全に水生に
なった唯一の草食性哺乳類のグループである。海牛目は、初期にテチス海に住んでいた可能性が高
く、最古の化石は、ジャマイカの始新世(5000万年前)の地層で発見されたペゾシーレン(Pezosiren)
である。ペゾシーレンは、水生に適応しながらも、四肢を持ち、陸上での体重負荷に耐える関節を
残していたと見られる。その後、漸新世から中新世の間にグループの多様性が増した。中新世には、
気候寒冷化、海洋の変化、および人間の干渉の結果として属種が減少していった。
ペゾシーレン・ポルテッリ(Pezosiren portelli)の再構成された複合骨
格。側面図、長さ約2.1m。影付きの部分は、化石である。白抜きの部分
(頬骨、環椎、腓骨、足先のほとんどの骨、およびほとんどの尾椎)は、化
石では欠損していた。尾の長さ、および足の形と姿勢は部分的に推測であ
る。
ほとんどの現代の海牛目が共有する典型的な頭蓋骨と基本的な体型を持っ
ていたが、まだ足ひれに改造されておらず、発達した4本の足も持ってい
た。骨格は、がっしりして、クジラとは異なり、海綿質が少なく重い緻密
質が多く、重量を増し、沈みやすくしていた。現代の海牛目は、化石の先
祖と比較して歯を大幅に減らしている。初期の種には、永久的な小臼歯、
犬歯、切歯があったが、現代の種にはこれらの歯がない。

4780万年前の化石海牛目のプロトシーレン(Protosiren)の小臼歯(P)、犬歯(C)、切歯(I)
の位置を示す図。



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