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イグアノドン科

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イグアノドンの歯化石(Replica)

         
標本データ 全体像 頬(唇)側面 舌(内)側面 遠心(後)側面 歯冠頂面 歯根底面 備  考
標本No.89031201
イグアノドンの左下顎歯
Iguanodon mantelli
Lewes、E.Sussex、イギリス
白亜紀前期アルビアン・1.2億年前

Tunbridge Wales sandstone

高さ:53.3mm、
幅:23.5mm、
厚さ:24.3mm、
重さ:86g
たぶん、国立科学博物館?で、購入した。
歯冠は、厚みがあり、歯根は、細く円柱状
である。下顎の歯冠先端は、頬側に曲がる。
上顎歯は、逆である。歯冠の頬側面の先端
付近に咬耗が見られる。切縁には、明瞭な
突起(鋸歯)がある。舌側面には、縦隆起が
見られる。中央隆起は、まっすぐで盛り上
がり、遠心側に寄っている。小隆起が、近
心側にあり、近心側に膨らむように湾曲す
る。小隆起は、常に中央隆起の前方にある
ので、左下顎の頬歯と思われる。


マンテリサウルスの尾椎骨

         
標本データ 右側面 左側面 背側面 腹側面 近心側面 遠心側面 備  考
標本No.95072106
マンテリサウルスの尾椎骨
Mantellisaurus atherfieldensis
Isle of Wight(ワイト島)、イギリス
白亜紀前期アルビアン・1.2億年前

Wessex Formation

長さ:68.5mm、
幅:38.1mm、
高さ:68.9mm、
重さ:274g
大恐竜博(池袋サンシャイン)で、購入した。
椎体と呼ばれる主体部分の断面が六角形と
なっている。椎(脊髄)孔が大きく、中の方
は、堆積物が詰まっている。前関節突起が
残っている。棘突起の下部は、残っている
が、そこに付随する後関節突起は、欠けて
いる。椎体の縁は、削れて丸みを帯びてい
る。骨組織がよく見える。椎体の近心側、
遠心側面は、わずかに凹む。


イグアノドンの歯化石

イグアノドンを最初に特定したのは、イギリスのギデオン・マンテル博士である。
博士は、1822年にサセックス州、カックフィールドのホワイトマンズグリーンにあ
るティルゲートフォレストのウィールデン層(白亜紀前期)から、大きな歯を発見し、
イグアナの歯に似ていることから、1825年にイグアノドンと命名した。前下顎骨は、
歯のないくちばしで、ケラチンで覆われていた。名前が示すようにイグアナのような
歯があったが、はるかに大きく、より密集していた。縦列の交換歯の列を持っていた
ハドロサウルス科とは異なり、イグアノドンは各位置に一度に1つの交換歯しか持っ
ていなかった。上顎は、片側最大29本の歯を保持し、顎の前部には歯がなく、下顎は、
25本だった。下顎の歯は、上顎の歯よりも広いため、数は少ない。歯冠のエナメル質
表面には、縦すじが見られ、中央隆起が顕著である。小隆起は、常に中央隆起の前方
にある。下顎歯の中央隆起のあるエナメル質表面は、舌側にあり、逆に、上顎歯の中
央隆起のあるエナメル質表面は、頬側にある。咬合の仕方は、ハドロサウルスなどと
同じで、下顎歯の頬側に上顎歯が滑り落ちるように咬合する。そのため、下顎歯の頬
側には、広い咬耗面が形成される。上顎歯は、舌側に咬耗面を形成する。


イグアノドン科 (Iguanodonntidae)
イグアノドン科は、ジュラ紀後期から白亜紀後期に生息した草食恐竜のグループであ
る。イグアノドン科は、ハドロサウルス科に至るまでの多系統群であることが分かっ
た。イグアノドン科は、約1億7000万年前のジュラ紀中期に進化し、世界中に広がっ
た。それらは、現在の北極圏内でも発見されている。白亜紀前期の終わりまでに多様
性と豊富さのピークに達した。


以下に、イグアノドン科の分類と近縁な属を示す。


イグアノドンの近縁属

① イグアノドン (Iguanodon) (ベルギー・エノー州、白亜紀前期)
② ダコタドン (Dakotadon) (アメリカ・サウスダコタ州、白亜紀前期)
③ ルルドゥサウルス (Lurdusaurus) (ニジェール、白亜紀前期)
④ ジンゾウサウルス (Jinzhousaurus) (中国・遼寧省、白亜紀前期)
⑤ マンテリサウルス (Mantellisaurus) (イギリス・ワイト島、白亜紀前期)
⑥ ドロドン (Dollodon) (ベルギー、白亜紀前期)
⑦ アルティリヌス (Altirhinus) (モンゴル・ドルノゴビ州、白亜紀前期)
⑧ オウラノサウルス (Ouranosaurus) (ニジェール、白亜紀前期)
⑨ プロバクトロサウルス (Probactrosaurus) 
(中国・内モンゴル、白亜紀前期)
⑩ エクイジュブス (Equijubus) (中国・甘粛省、白亜紀前期)
⑪ フクイサウルス (Fukuisaurus) (日本・福井県、白亜紀前期)



① イグアノドン (Iguanodon)

1878年、ベルギー、エノー州、ブリュッセル、ベルニサール炭鉱、深さ
322mの白亜紀前期(約1億1130万年前)のサントバルブクレイ層からイ
グアノドンの38体の完全な全身骨格化石が発見された。現在、ヨーロッ
パ中から化石が発見されている。Iguanodon bernissartensisは、この
属のネオタイプである。完全な全身骨格化石は、イグアノドンの復元につ
いての研究を大きく進ませた。一方で、「黄鉄鉱病」のために化石が危機
に瀕した。化石骨の中の黄鉄鉱は、硫酸鉄に変化し、化石骨にひびが入っ
たり、崩れたりして損傷を与えていた。乾燥を防いだり、硬化させたりし
て進行を遅らせた。現在では、ポリエチレングリコールを内部に浸透させ、
特別なコーティングを施している。復元にも、変遷があった。はじめは、
二足で、尾を地面に付けたカンガルーのような立ち姿であった。現在は、
真っ直ぐな尾と背中で、体を地面に水平に保ち、必要に応じて体を支え
るために腕を地面に付けた状態となった。全長は、7~9m、体重は、約7
tと推定されている。


② ダコタドン (Dakotadon)

ダコタドンは、アメリカ、サウスダコタ州、ホワイトウッドの白亜紀後期
(約1億3900万年前)のラコタ累層から発見された。イグアノドント恐竜
の属であり、部分的な頭蓋骨、1つの胴椎と2つの尾椎が知られている。四
肢等は、保存されていない。歯のエナメル質は、歯冠の舌面に完全に制限
されている。目立つ滑らかな歯状突起が歯冠の縁に沿って存在する。これ
らの歯状突起は、歯冠の最も広い点のすぐ腹側に位置するわずかに湾曲し
た棚の外側に発生し、歯冠の背側縁に沿って続き、歯の前縁に沿って歯冠
の腹側の最も広い点で終わる。歯列歯の一次隆起は、後方に配置されてい
る。二次隆起部も舌面上に存在し、最も一般的には、一次隆起の前方に位
置する。これらの二次隆起は、多くの場合、一次隆起と同じくらいよく発
達している。一次隆起と二次隆起の両方の正中線に沿ってかすかな窪みが
しばしば存在し、それらの隆起に平らな外観を与える。時折、いくつかの
かすかに発達した補助的な隆起も歯冠に存在する。歯列間に歯冠間スペー
スが欠けているため、歯列全体に連続的な咬合面が形成される。各歯槽か
らの単一の歯冠のみが一度に咬合面に寄与し、単一の交換歯も各歯位置に
存在する。多くの歯冠に2つの摩耗面が存在し、後面は、通常前面よりも
大きい。全長は、約9mほどと推定される。おそらく、通常、四足歩行の草
食恐竜だった。


③ ルルドゥサウルス (Lurdusaurus)

ルルドゥサウルスの名前は、「重いトカゲ」を意味する。1965年に、ニジ
ェール、テネレ砂漠の白亜紀前期(約1億2100万年前)のエルハズ層で発見
された。ホロタイプ標本は、断片的な頭骨を含む部分骨格からなる。後肢
は短く、胴は特徴的に低く、腹部は地上から0.7mほどの高さにあり、胸郭
は極度に広かった。頸部は、比較的長く(1.6m)で尾は他の鳥脚類と比較
して短かった。前肢は、他の一般的なイグアノドン科と比較しても非常に
力強く、その中手骨(手首の骨)が融合して大きなブロックに補強されてい
た。親指には、おそらく戦闘用と目される大きくて円錐型の爪(スパイク)
があった。手を棍棒のように使用した可能性がある。幅が広く短い手は、
体重を支えることに適応していたものである。足は、独特で、中足骨が互
いにしっかりと接触しておらず、趾を広く広げることが可能だった。砂地
に適応したため、あるいは水棲と考えられている。歯は、保存されていな
かったが、19.5cmの顎に10個の歯槽の穴があった。全長は、約7m、体重
は、約2.5tと推定される。このサイズの鳥脚類としては著しく重い。


④ ジンゾウサウルス (Jinzhousaurus)

ジンゾウサウルスは、中国、遼寧省錦州市義県、白菜溝近郊の白亜紀前期
(約1億2200万年前)の義県累層の大王杖子層(Dawangzhangzi beds)
から発見された。属名は、錦州(Jinzhou)市にちなみ、名付けられた。ホ
ロタイプの化石は、押しつぶされた石版の中に、ほぼ完全な状態の骨格が
保存されていた。頭骨の長さは、50cmほどである。頭骨は、鼻孔が大き
く、吻部が細長く、前眼窩窓がなくなっていた。歯骨(下顎の骨)には、少
なくとも17本の歯があった。全長は、約7mと推定される。イグアノドン
類とハドロサウルス類の特徴が混ざった鳥脚類で、親指スパイクを持って
いるところは、イグアノドン類、顔が少し長めで鼻の穴が大きいところ
は、ハドロサウルス類に似ている。2010年の研究の結果、イグアノドン
上科より、派生的なグループであるハドロサウルス上科の基盤的なメンバ
ーであると結論付けられた。


⑤ マンテリサウルス (Mantellisaurus)

マンテリサウルスは、1914年にイギリス、イングランド、ワイト島南部の
アザーフィールドの海岸にある白亜紀前期(約1億2500万年前)のヴェク
ティス累層上部で発見された。属名は、イグアノドンの発見者であるギデ
オン・マンテルに献名されたものである。ホロタイプ標本は、ほぼ完全な
骨格だった。完全もしくは、ほぼ完全な骨格が多数知られている。イグア
ノドン・ベルニサルテンシスと比較して、マンテリサウルスは小さく、体
重は、750Kgと推定されている。その前肢は、ベルニサルテンシスの前肢
よりも短かった。マンテリサウルスでは、前肢の長さは、後肢の約半分で
あったのに対し、ベルニサルテンシスでは、後肢の長さの約70%であった。
イグアノドンより軽量な体型で、オウラノサウルスにより近縁である。
2007年に、イグアノドン属から新属のマンテリサウルスに変更された。
体長は、約7mほどだったと推定されている。マンテリサウルスの化石は、
ノルトラインヴェストファーレン州(ドイツ)、オードフランス(フランス)、
アラゴン(スペイン)、ベルニサール(ベルギー)などの場所でも発見されて
いる。時間の大部分を二足歩行として過ごした。


⑥ ドロドン (Dollodon)

ドロドンは、ベルギー西部のモンス盆地北縁の「イグアノドン陥没穴」に
見られる、白亜紀前期(約1億2500万年前)のオートラージュ層とボードゥ
ール粘土層から発見された。1884年にルイドロによって発見されたので、
2008年にドロの名にちなんで、グレゴリーS.ポールが独自の属ドロドン
を命名した。しかし、マンテリサウルスのシノニムの可能性がある。ホロ
タイプ頭蓋骨は、イングランド南部にあるベクティス累層上部で発見され
た。全身骨格は、ベルニサールで発見され、ベルギー王立自然科学研究所
に立ち姿で復元されている。体長は、約7m、体重、750Kgほどだったと推
は定されている。


⑦ アルティリヌス (Altirhinus)

アルティリヌスの名は、独特のアーチ状に突き出した鼻を持つため、「高
い鼻」の意味で名付けられた。化石は、1981年、ソビエト・モンゴル共
同調査隊によりモンゴル、ドルノゴビ県にある白亜紀前期(約1億2500万
年前)のフフチェク累層から発見された。ホロタイプ標本は、左側がよく
保存されている頭骨と手の断片、肩帯、骨盤などを含む胴体の骨である。
化石は最初、イグアノドンの一種として記載されたが、1998年、イギリ
スの古生物学者デビッド・ノーマンによりアルティリヌスと命名された。
前肢の長さは、後肢の長さの半分ほどで、通常は二足歩行、食事をする際
は、おそらく四足歩行であった。前肢の内側の3本の指は、非常に太く、お
そらく体重を支えるのに使われた。外側の指(第一、第五指)は、異なる用
途のために変わった形をしていた。第一指は、イグアノドンのもののよう
に単純なスパイク形である。親指のスパイクは、防御や、種子や果実を破
るのに使われた可能性がある。第五指は、いくぶん他の指と対向してい
て、食べ物をつかむのに使われた可能性がある。アルティリヌスは、端が
外側に広がった口吻を持つ。口の先端にある角質のくちばしと、頬歯の間
には大きな隙間があり、くちばしで刈り込みながら側面の歯で咀嚼するこ
とができたと考えられる。体長は、約6.5m、体重は、1.1tほどだったと推
定されている。


⑧ オウラノサウルス (Ouranosaurus)

オウラノサウルスの名は、アラビア語の「勇敢な」または、ギリシャ神話
の神ウーラノスにちなんだ意味がある。化石は、1965年から1972年の間、
フランスの古生物学探検によって、ニジェールのサハラ砂漠のガドゥファ
ウア地域の白亜紀前期(約1億2000万年前)のエルハズ累層から発見され
た、3体のほぼ完全な骨格だった。頭蓋骨の長さは、67cmで、幅は、24.4
cm、高さは、わずか26.0cmで、かなり低かった。頭蓋骨の上部は平らで、
最高点は、眼窩のすぐ前にあり、頭蓋骨の後部と鼻の先端の両方に向かっ
て傾斜していた。これにより、オウラノサウルスは、ハドロサウルス科
以外の頭蓋骨の中で最も細長い頭蓋骨を持つ。どちらの前顎骨にも歯はない
が、前端には、骨の縁に複数の歯状突起によって形成された「偽歯」があ
る。上顎の歯の端は、わずかに弧を描き、20本の歯が保存されていた。歯
列の前端は壊れており、合計数を22と予測された。第1・2世代の歯でデン
タルバッテリーを形成し、第3世代の萌出した歯が欠けていた。下顎と上
顎の両方に22の歯の位置があり、合計88の歯の位置があった。オウラノ
サウルスの最も顕著な特徴は、背中に大きな「帆」があり、長くて広い神
経棘で支えられており、北アフリカでも知られている有名な肉食恐竜であ
るスピノサウルスに似ている。前肢は、かなり長く、後肢の長さの55%で
あった。後肢は、大きく頑丈で体の重さに耐え、二足歩行を可能にするの
に十分な強度があった。体長は、7~8.3m、体重は、2.2tほどだったと推
定されている。


⑨ プロバクトロサウルス (Probactrosaurus)

プロバクトロサウルスは、1959年、1960年にソビエト-中国遠征隊によ
り、内モンゴル自治区、ゴビ砂漠のMoartu近郊の白亜紀前期(約1億3000
万年前)の大水溝(Dashuigou)層から発見された。ホロタイプ標本は、部
分的な頭骨の骨格で、他の部分骨格や多数の断片とともに発見された。軽
量な造りで、腕や手は、比較的細長く、親指のスパイクは、小さかった。
細い吻部、伸張した下顎および扁平な頬歯の重なり合った2重の列からな
るデンタルバッテリーを持っていた。おそらく主に四足歩行であった。体
長は、5.5m、体重は、1tほどだったと推定されている。


⑩ エクイジュブス (Equijubus)

エクイジュブスは、2000年夏に中国-アメリカ共同調査隊により、中国、
甘粛省、馬鬃山の白亜紀前期(約1億2500万年前)の新民堡層群の河湖両
成堆積物から発見された。エクイジュブスの名は、「ウマのたてがみ」の
意味で、発見地にちなんで名付けられた。ホロタイプ標本の化石は、完
全な頭骨と関節状態の下顎、部分的な体の骨により構成されている。体
の化石には、9個の頸椎、16個の胴椎、6つの仙椎が含まれている。体長は、
約7m、体重は、2.5tほどだったと推定されている。


⑪ フクイサウルス (Fukuisaurus)

フクイサウルスは、1989年、日本の福井県勝山市北谷の白亜紀前期(1億
2500万年前~1億1500万年前)の手取層群北谷層から産出した。日本で
の記載前からの別名で「フクイリュウ(福井竜)」ともいう。ホロタイプ
標本は、右上顎骨、右頬骨で、パラタイプと合わせて、総計16点、多くは
頭蓋骨の構成物である。現在、フクイサウルスは、全身の3~4割くらい
の骨格が発見されている。歯の特徴は、モンゴルで発見されたアルティリ
ヌスと似ている。頑丈な上顎鋤骨の関節の構造は、フクイサウルス特有の
ものである。歯を持つ上顎骨は、鋤骨に強く融合しているため、横向きの
咀嚼運動は、不可能とされている。通常は二足歩行、食事の時などは四足
歩行であった。体長は、約4.7m、体重は、400Kgほどだったと推定され
ている。



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