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ヒゲクジラ類の骨

         
標本データ 背側面 腹側面 右側面 左側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 備  考
標本No.93080503
チチブクジラの鋤骨(じょこつ)
Dioricetus chichibuensis
         vomer

埼玉県秩父市蓼沼
中新世中期・1500万年前
秩父町層群・奈倉層

長さ:48.8mm、
幅:21.5mm、
厚さ:8.9mm、
重さ:9.04g
奈倉層の泥質砂岩を割って発見。この場所
からクジラやアザラシ、カメの化石が出て
いた。サメの歯も結構出ている。腹側は、
滑らかな平面が長屋根型に100度の角度で
接する。接する線は、直線で緩やかに背側
に反る。背側は、V字型に凹み、底は丸み
を帯びて凹みややうねっている。骨の表面
に、近心に向かって収束するような筋が見
られる。遠心縁は、破断して摩滅している。
近心縁は、採集の際に破断した。断面では、
左右が非対称である。付近から1979年、ヒ
ゲクジラの頭骨の化石が、見つかっている。

クジラの鋤骨(じょこつ)
上の画像は、マイルカ科のハンドウイルカの頭骨の解体図である。中央の前頭
骨から前方に伸びた細長い部分が、鋤骨である。下の画像は、ハンドウイルカ
の前頭骨を4方向から表した図である。ハンドウイルカは、ハクジラであるが、
ヒゲクジラもほぼ同様な位置に鋤骨がある。標本No.93080503の鋤骨は、赤
く示した部分に相当すると思われる。

秩父郡小鹿野町般若のオガノヒゲクジラの鋤骨
上の画像は、1982年、秩父郡小鹿野町般若の丘公園から産出した、ヒゲ
クジラ亜目、ケトテリウム類のパリエトバラエナ属の頭骨である。中央に
鋤骨が見られる。秩父町層群奈倉層からの産出である。当時、旧秩父セメ
ントの採石場で作業員により発見され、埼玉県立自然史博物館に寄贈され
たものである。現在の埼玉県立自然の博物館に展示してある。

秩父市蓼沼産のチチブクジラの骨
上の画像は、1979年、秩父市蓼沼の荒川右岸から産出した、ヒゲクジラ亜目、ケトテリウム
類のディオロケトゥス属の頭骨等である。秩父町層群奈倉層から、秩父で最初のクジラ化石
の産出であった。チチブクジラ(Dioricetus chichibuensis)と命名された。頭骨は、前部
が欠けている。標本No.93080503の鋤骨と同じ場所から産出している。もしかすると、同
じ個体のものかもしれない。しかし、産出年に、14年の差がある。この標本は、埼玉県立自然
の博物館に展示してある。

ヒゲクジラの起源とヒゲの進化
上の画像は、エティオケタス ウェルトニ(Aetiocetus weltoni)の頭蓋骨の腹側面図であ
る。エティオケタスは、漸新世(3400万年前~2300万年前)に生存していた、歯のある
ヒゲクジラの祖先とされている。1990年、北海道足寄町茂螺湾の漸新世後期(2800万年前~
2300万年前)の川上層群茂螺湾(もらわん)層からも発見されている。上の画像で、赤い星印
の部分の溝(孔)は、「外側口蓋孔(Lateral palatal foramina)」と呼ばれ、ヒゲへの血管・
神経孔と想定されているものである。一説によると、上顎歯の内側に肥大化した歯茎とケラ
チン質の突起があり、ヒゲの役割をして、捉えた獲物を逃がさないようにする工夫であった
とのことである。つまり、エティオケタスは、歯とヒゲの両方を持っていたとのことである。
やがて、歯が退化してヒゲだけになったものが、現在のヒゲクジラとのことである。現存す
るヒゲクジラは、出生時には歯がないが、発達初期の胎児には歯があり、胎児の発達に伴い
脱落していくとのことである。


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