展示標本のサイト
哺乳綱・鯨目・ハクジラ(亜目)類
manmmalia・Cetacea・Odontoceti
     



ハクジラ類の歯

         
標本データ 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 咬合面 歯根底面 備  考
標本No.77010717
ケントリオドンの歯
Kentriodon sp.
埼玉県東松山市神戸
中新世中期・1500万年前
都幾川層群・神戸礫岩層

高さ:9.6mm、
幅:3.6mm、
厚さ:5.3mm、
重さ:0.153g
礫岩層を崩して篩がけし発見。
咬合面が平らに摩滅している。
歯根底は、堆積物に置換され、
歯髄孔は見えない。歯冠の先端
は、舌側を向いて大きく湾曲し
ている。歯冠のエナメル質は細
かい皺があるが滑らかで透明感
のある黄色をしている。縦方向
のひびが見られる。歯冠の断面
は、楕円で、わずかに近心側が
凹む。上顎左、下顎右の歯か判
断は難かしい。
     
標本データ 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 咬合(上)面 歯根底(下)面 備  考
標本No.77032802
ケントリオドンの歯
Kentriodon sp.
埼玉県東松山市神戸
中新世中期・1500万年前
都幾川層群・神戸礫岩層

高さ:7.0mm、
幅:2.3mm、
厚さ:2.2mm、
重さ:0.05g
礫岩層を崩して篩がけし発見。咬合
面が頬側に傾き摩滅している。歯根
底は滑らかで、折れたようには見え
ない。歯髄孔は大きく明瞭である。
歯冠の先端は、舌側を向いて湾曲し
ていたと思われる。歯冠のエナメル
質は滑らかで黒ずんでいる。縦方向
のひびが見られる。歯冠と歯根の断面
は、ほぼ円で、わずかに頬舌側に膨
らんでいるようだ。歯根底は、遠心
側に向かっていたと思われる。上顎
右、下顎左の歯か判断は難かしい。
       
標本データ 頬(唇)側面 舌(内)側面 近心(前)側面 遠心(後)側面 咬合面 歯根底面 備  考
標本No.77062629
ケントリオドンの歯
Kentriodon sp.
埼玉県東松山市神戸
中新世中期・1500万年前
都幾川層群・神戸礫岩層

高さ:4.0mm、
幅:2.4mm、
厚さ:1.7mm、
重さ:0.013g
礫岩層を崩して篩がけし発見。咬合
面は、摩滅がなく、やや丸みを帯び
てとがっている。歯根底は平らで滑
らか、折れたようには見えない。歯
髄孔は見えない。歯冠の先端は、極
わずか舌側に湾曲している。歯冠の
エナメル質は滑らかで白い。舌側中
央に縦方向のひびが見られる。歯冠
と歯根の断面は、楕円で、近遠心側
に膨らんでいる。舌側の歯冠面は、
平らになっている。部位の判断は難
かしい。

絶滅したハクジラのケントリオドン
ケントリオドンの化石は北米、ヨーロッパ、ニュージーランド、日本の漸新世
後期から中新世中期の地層から発見されている。イルカと異なり、左右対称の
頭骨を持つ。鼻孔はイルカに似て背側に位置している。そのため、眼窩上隆起
が発達し、メロンがあった。エコーロケーションを行う最初のハクジラの可能
性がある。中~小サイズの歯列が上下の顎にある。小さな魚やイカなどを食べ
ていた。頸椎がイルカのように薄く融合しておらず、長い椎体のため首が長く、
可動性があったと思われる。小型のハクジラで、体長は、2m程であった。マ
イルカ科が出現する中新世後期まで繁栄したハクジラの一大グループであった。
1940年代に岩手県二戸市馬部地の門ノ沢層上部(1630万~1590万年前)から
頭蓋骨や耳骨の化石が産出した。2019年からの調査で新種であることがわか
る。ケントリオドン スガワライ(Kentriodon sugawarai)と命名された。

世界最古、マッコウクジラの全身骨格化石
昭和61年(1986)松本市の北部に位置する旧四賀村の保福寺川の露頭で、当時
の小学5年の少年が釣りをしているときに、歯の化石を見つけた。化石が多く
出る四賀村で化石館創設の話がでて、村民に化石の提供を求めると、少年が恐
竜の化石を持っていると申し出た。見ると貴重な化石であり、昭和63年(1988)
に、発見場所で大々的に発掘作業が行われ、マッコウクジラの全身骨格化石が
発見された。上の写真は、四賀化石館に展示してある、全長5.5mのシガマッコ
ウクジラ「ブリグモフィゼテル シゲンシス(Brygmophyseter shigensis)」
の幼体の全身骨格化石。マッコウクジラの全身骨格化石は、アメリカのカリフ
ォルニアと日本の四賀と2例しかなく、1300万年前の別所層からの産出で、全
身骨格としては世界最古である。

世界最古、マイルカ科の化石
北海道新十津川町に分布する増毛層から、1961年以前に発見、1977年に記
載されていたスジイルカ属の化石種「ステネラ・カバテンシス(Stenella
kabatensis)を再検討した研究で、2014年、世界最古のマイルカ科の新種
化石と判明し、「エオデルフィヌス・カバテンシス(Eodelphinus kabaten-
sis)」と命名した。地層の年代は、約900万年前の中新世後期である。
さらに発見が続く。群馬県安中市原市の碓氷川沿いの約1130万年前の安中層
群原市層で化石収集家が20年以上前に発見したイルカの頭骨化石を群馬県立
自然史博物館に寄贈した。2020年、詳しく調査した結果、頭の骨の特徴から
マイルカ科の新種と判明し、「ノリスデルフィス・アンナカエンシス(Noris-
delphis annakaensis)」と命名した。世界最古のマイルカ科の化石が、前
記のものより約200万年遡る。


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