説明 |
ハクジラは、永久歯で、もとは異形歯であっ
たが、やがて同形歯になった。ハクジラは、
食物を噛むことをせず、飲み込むために舌と
舌骨を発達させ、口腔内を陰圧にして、強い
吸引力を持たせた。歯の用途は、食物を捕ま
え逃がさないようにするだけとなった。シャ
チなど歯が大きく発達した一部のハクジラは、
肉を食いちぎるために歯を用いている。歯の
数は、上下顎や種類、性別によって異なる。
下顎だけで、最も多いのは、マイルカ科のハ
シナガイルカで、120本。マイルカで100本。
マッコウクジラで56本。シャチで26本。少ない
ものは、アカボウクジラ科で、2本。
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ハクジラの耳は、耳介や外耳道がなく、ちょっと
した凹みがあるだけである。水中から伝わってき
た音は、下顎窓(下顎内の空洞)につまった脂肪(
音響脂肪)から、耳骨(中耳:鼓室胞と内耳:耳周骨)
へ伝わる。クジラの耳骨は、他の部分の骨よりも緻
密で硬い。また、死後、頭骨から外れやすいために
化石として発見されやすい。ハクジラの鼓室胞と
耳周骨は、弱く結合組織でつながっている。イル
カの耳周骨は、布袋様に似ているために、布袋石
と呼ばれ、お守りとされている。
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ハクジラ類の頭骨は、伸張した上顎骨が眼窩の上
を通り、「上眼窩突起」という筋肉付着部を持っ
ている。この筋肉と鼻道にある発声唇(サルの唇)
を用いて、空気を震わせて超音波(クリック音)を出
している。超音波は、鼻道の前にある脂肪組織の
「メロン」でレンズのように屈折集中される。超音
波は、物体に当たって反射し、下顎骨内の脂肪組
織を通って、耳骨に伝えられ、対象までの距離や
方向の測定に使われている。このような能力をエ
コーロケーション(反響定位)と呼んでいる。餌で
あるイカや小魚に超音波ビームをあて、衝撃波に
よって動けなったところを食べることもできると
言われている。 |