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ドリオサウルス科

Reptilia・Diapsida・Archosauria・
Dinosauria・Ornithischia・
Ornithopoda・Dryosauridae
   



ドリオサウルスの歯化石

ドリオサウルスの頬歯は、厚みがあり、イグアノドンの歯に似ているが、かなり小型
にした歯である。歯は、横1列に隙間無く並ぶ。歯冠には、前縁と後縁の両方の先端
付近に尖った鋸歯がある。歯冠中央付近の幅が広く、先端に向かって狭くなる。また、
歯根に向かっても狭くなる。歯冠のエナメル質表面には、縦溝が見られ、中央隆起が
顕著である。下顎歯の中央隆起のあるエナメル質表面は、舌側にあり、逆に、上顎歯
の中央隆起のあるエナメル質表面は、頬側にある。咬合の仕方は、ハドロサウルスな
どと同じで、下顎歯の頬側に上顎歯が滑り落ちるように咬合する。そのため、下顎歯
の頬側には、広い咬耗面が形成される。上顎歯は、舌側に狭い咬耗面を形成する。


ドリオサウルス科の種類
ドリオサウルス科は、原始的なイグアノドントの科で、アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカのジュ
ラ紀中期から白亜紀初期に生息したグループである。首が長く、後肢が長く、尾が長く硬かった。
前肢は、それぞれ5本の指を持ち、短かった。目は、かなり大きく、優れた視力を持っていたと考
えられる。角質のくちばしと頬歯を持ち、他の鳥脚類と同様に、植物を咀嚼して食べていた。強力
な後肢を備え、迅速で機敏なランナーであった。肉食恐竜に対して、急なターンと速さで逃げてい
たと思われる。群れで行動し、育児もしていたと考えられる。


以下に、ドリオサウルス科の分類と主な属を示す。


ドリオサウルス科

① カルボサウルス (Callovosaurus) (イギリス・ケンブリッジシャー州、ジュラ紀中期)
② カンナサウルス (Kangnasaurus) (南アフリカ・ケープ州、白亜紀前期)
③ ドリオサウルス (Dryosaurus) (アメリカ・ユタ州、ジュラ紀後期)
④ ディサロトサウルス (Dysalotosaurus) (タンザニア、ジュラ紀後期)
⑤ ヴァルドサウルス (Valdosaurus) (イギリス・ワイト島、白亜紀前期)
⑥ エルラゾサウルス (Elrhazosaurus) (ニジェール、白亜紀前期)
⑦ イユク (Iyuku) (南アフリカ・東ケープ州、白亜紀前期)

  Paul M. Barrett; Richard J. Butler; Richard J. Twitchett; Stephen Hutt (2011).
  "New material of Valdosaurus canaliculatus (Ornithischia:Ornithopoda)
  from the Lower Cretaceous of southern England". Special Papers in
  Palaeontology. 86: 131–163. より


① カルボサウルス (Callovosaurus)

カルボサウルスの化石は、イギリス、ケンブリッジシャー州ピーターバラ
近く、フレトンのジュラ紀中期(約1億6400万年前)のオックスフォード粘
土層から発見された、完全な左大腿骨のみである。大腿骨の長さは28cm
で、体長は、約2.5mであったと推定されている。近くから、部分的な脛骨
も見つかっている。


② カンナサウルス (Kangnasaurus)

カンナサウルスは、南アフリカ、ケープ州北部のオレンジ川渓谷にある、
カンナス農場の井戸の深さ34mで見つかった下顎歯がもとになり、「カ
ンナス農場のトカゲ」を意味する名前が付けられた。カンナス農場の地
下には、古代の火口湖の礫岩であるカラハリ堆積物層が存在する。白亜紀
前期(約1億3000万年前)のものであると考えられている。近くの他の堆
積物から、2つの部分的な大腿骨、部分的な脛骨、部分的な中足骨、部分
的な肢骨、椎骨、および正体不明の骨が見つかったが、この種類かどうか
疑わしいとされている。1つの大腿骨は、他の種類のものと異なる特徴を
持っているので、この種類のものではないかと想像されている。サイズは、
不明で、おそらく二足歩行の小型草食恐竜だった。


③ ドリオサウルス (Dryosaurus)

ドリオサウルスは、森林に棲む恐竜と推測されて「オークのトカゲ」を意
味する名前が付けられた。生息地が非常に広く、化石は、北アメリカ大陸、
イギリス、ルーマニア、タンザニアなどから見つかっている。ホロタイプ
標本は、アメリカ、ワイオミング州、アルバニー郡、コモグラフのジュ
ラ紀後期(1億5500万年前)のモリソン累層で発見された。化石は、部分的
な頭蓋骨であった。ドリオサウスは、体つきががっしりして大型で、後肢
の機能指は、3本まで減少していた。前肢には、5本の指があった。下顎
先端、前顎部の歯が退化して角質の嘴となり、上顎の歯肉と噛み合い、硬
い植物をたち切ることができた。体に比べて頭が小さい。全長は、約4m
ほどと推定される。


④ ディサロトサウルス (Dysalotosaurus)

ディサロトサウルスは、タンザニア、リンディ地域のジュラ紀後期(約1億
5200万年前)のテンダグル累層から発見された。化石は、1909年の発見
以来、何千もの骨と骨片が回収されている。最高の保存状態の骨格は、第
二次世界大戦中に破壊された。短い前肢と長い尾、強力で長い後肢を持っ
ていた。若い個体は、下顎と上顎にそれぞれ10本の歯しかなかったが、成
体では、13本の歯があった。歯も年齢とともに幅広くなった。歯は、雑食
性の幼体から完全に草食性の成体まで、食性の変化を示している。全長は、
約2.5m、体重は、約80Kgと推定されている。


⑤ ヴァルドサウルス (Valdosaurus)

ヴァルドサウルスの小さな大腿骨は、イギリス、ワイト島南西部の海岸に
あるカウリーズチャインで発見された。化石は、大腿骨下部の顆の間の明
瞭な溝が特徴だった。発見地にある白亜紀前期(約1億4500万年前)のウ
ィールド層にちなみ、ラテン語で「ウィールドの」を意味する名前を付けた。
発見された大腿骨は、長さ14cmほどと小さく、幼体ではないかと考えられ
ている。体長は、1.2m、体重は、10kgと推定される。2016年には、ワイト
島からヴァルドサウルスの新しい標本が発見された。標本は、これまでに
発見された中で最も完全であり、関節でつながり、部分的な背椎骨群、ほ
ぼ完全な尾、骨盤、および両方の後肢が含まれていた。標本の体長は、4
〜5mだったと推定されている。


⑥ エルラゾサウルス (Elrhazosaurus)

エルラゾサウルスは、ニジェール、アガデス、テネレ砂漠、ガドゥファウ
アの白亜紀前期(約1億1500万年前)のエルハズ累層の上部から、発見され
た。化石のタイプ標本は、左大腿骨のみである。ヴァルドサウルスの大腿
骨と比較され、転子の位置などによって区別された。他にも上腕骨など、
化石は、発見されている。頬歯は、イグアノドンの歯に似ているが、歯冠
の高さが幅に対して小さい。エルラゾサウルスは、軽量な草食性の二足歩
行ランナーだった。体長は、約1.5m、体重は、約10Kgほどと推定される。


⑦ イユク (Iyuku)

イユクは、南アフリカ、東ケープ州、カークウッド崖の白亜紀前期(約1億
3500万年前)のカークウッド累層から発見された。化石は、少なくとも27
の幼体および孵化した個体の残骸、亜成体を含む骨床から産出した。ホロ
タイプ標本は、部分的な頭蓋骨、椎骨、肩甲骨、骨盤帯、両脚、肋骨を含
む不完全な半関節骨格で構成されている。「イユク」は、「孵化したばかりの
子」を意味するコサ語(南アフリカとジンバブエの公用語)に由来している。
標本は、4段階の成長期を示し、亜成体の脛骨は、最大42cmであった。化
石を含む地層は、時間の経過とともにより乾燥した環境への移行を示して
いる。イユクは、細長い体を持ち、速い走りと機敏なターンをして捕食者
から逃げていたと想像できる。体長は、3.6m、体重は、約90kgと推定され
た。





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