展示標本のサイト
哺乳類(綱)・食肉目・鰭脚類・
デスマトフォカ科・アロデスムス属

manmmalia・Carnivora・Pinnipedia・
Desmatophocidae・Allodesmus
     



展示標本の紹介

       
標本データ 歯冠頬(唇)側面 歯冠舌(内)側面 歯冠近心(前)側面 歯冠遠心(後)側面 歯冠咬合(上)面 歯根底(下)面 部位図 備  考
標本No.2004032001
アロデスムス 上顎右犬歯
Allodesmus sp.
宮城県黒川郡大和町大平
中新世中期・1500万年前
青麻層 Aoso Formation

高さ:66.5mm、
幅:20.2mm、
厚さ:14.7mm、
重さ:15.89g
ヤフーオークションで、仙台市の
MGさんより購入。歯根は表面の
摩滅が進み、歯根底側半分ほど
が欠けている。歯冠は、近心側が
直線で、遠心側はわずかに湾曲す
る。歯冠の湾曲が弱く、歯根が長
いので上顎の歯と判断した。歯冠
遠心側には、明瞭な切縁があり、
頬側にやや偏っている。歯根は舌
側が膨らみ、頬側が平らになって
いる。歯冠も舌側の方が膨らんで
いる。歯冠頂部が摩滅している。
         
標本データ 歯冠頬(唇)側面 歯冠舌(内)側面 歯冠近心(前)側面 歯冠遠心(後)側面 歯冠咬合(上)面 歯根底(下)面 部位図 備  考
標本No.2004080830
アロデスムス 上顎右犬歯
Allodesmus sp.
宮城県黒川郡大和町大平
中新世中期・1500万年前
青麻層 Aoso Formation

高さ:56.6mm、
幅:13.3mm、
厚さ:9.8mm、
重さ:5.94g
ヤフーオークションで、仙台市の
MGさんより購入。歯根が縦に割れ
た破片である。歯根の表面は、象牙
質が明瞭で、歯冠の底部の一部が
残っている。この一部から、前臼
歯や後臼歯でないことがわかる。
歯根の膨らみ方から、歯冠が残っ
ている側が、頬側と判断した。歯
根の断面には、歯髄孔が見られ、歯
髄孔の先端は、頬側に寄っている。
下顎左犬歯か上顎右犬歯のどちら
かと思われる。上顎歯か?
         
標本データ 近心側面 遠心側面 外側面 内側面 上端面 下端面 部位図 備  考
標本No.2004080831
アロデスムス 肋骨
Allodesmus sp.
宮城県黒川郡大和町大平
中新世中期・1500万年前
青麻層 Aoso Formation

高さ:73.0mm、
幅:16.3mm、
厚さ:16.5mm、
重さ:25.17g
ヤフーオークションで、仙台市の
MGさんより購入。曲がった骨の
破片である。歯髄孔が見られない
ので、歯根ではないようだ。曲が
りの内側は平面であり、曲がりの
外側は丸い凸面である。片側の割
れ口は長方形であるが、凸部分が
溶蝕されている。海綿によって溶
蝕されるとのことである。曲がり
具合や断面の形状から、肋骨の可
能性が高い。位置的には近位の胸
椎骨につく肋骨と思われる。


日本産、アロデスムスの全身骨格化石
アロデスムスの名前は、ギリシャ語で、alloは「異常な」、desmusは「結びつき」を意味します。
日本や北米・カルフォルニアから化石が発見されている、絶滅した鰭脚類のデスマトフォカ科の一
種である。前肢の形状・長さ等、大きな目や独特な歯と顎や後肢の構造から、アシカに似た特徴を
持っている。アロデスムスは、約1600万年前(中新世中期初頭)に北太平洋の東海岸のどこかで進
化し、約1500万年前から1200万年前に、西海岸(日本近海)にまで広がった哺乳類で、鰭脚類の一
種である。巨大な目と単純化した歯が大きな特徴で、前後の指先には長い軟骨がのびて、長大なヒ
レをもっていた。アロデスムスは、現生のアシカのように暖かな海域にすみ、セイウチのように前
後のヒレを使って広域を遊泳したと考えられている。ゾウアザラシのように魚やタコ・イカなどを
狙って深海まで潜水できたと想像されている。オスの成獣は体長3m以上、体重300Kgほどに成長
し、メスは一回り小さかった。当時の海には、まだシャチが出現していなかったので、サメが天敵
であったと思われる。サメの歯の化石が産出する地点では、アロデスムスの化石も見つかることが
ある。1200万年前頃から海洋環境が地球規模で寒冷化するとともにアロデスムスは衰えはじめ、約
1000万年前に地球から姿を消してしまった。

平成8年、珠洲市三崎町杉山の珪藻土採掘坑で、アロデスムスの化石が発見された。ほとんどの骨
が関節でつながった状態で、ほぼ全身にわたる骨片が見つかった(残存率64%)。発見された骨格
は、鼻先から尻尾まで2.3mとやや小柄で、骨端の癒合が十分でないことから、若い個体で、陰茎骨
と犬歯がないのでメスと考えられている。左側の肋骨には海綿が付着してあけた穴が多数あり、こ
のアロデスムスの遺骸は、右を下にして泥に埋没したが、上になった左がしばらく海中にさらされ
ていたようである。アロデスムスの出土した飯塚珪藻土部層は、1250万年前~1220万年前と推定
されている。1200万年前頃の能登北部は、海底となっており、起伏に富んでいたため海水の上下の
循環が制限され、海底は低酸素の状態になっていた。飯塚珪藻土部層は、深海底で比較的速い速度
で堆積した。深海に沈んだアロデスムスの骨格は、低酸素で、酸化しにくい状態であったため、崩
壊せずによく保存された。


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